JFシェルナース
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貝殻で作られた魚礁「JFシェルナース」により、貝殻が微生物や小型動物の棲みかとなり魚を育て、海を育みます。海のものを海に戻す、これぞ大自然の法則。

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   前回、「閉鎖性海域の物質循環T」として、ボックスモデルについて説明した。この手法では、おもに実測値を用いた海域外との物質のやりとりから、海域内部での物質の増減を計算するが、内部で何が起こっているのかはそれこそ「ブラックボックス」である。そこで、内部に存在する食物連鎖を通した物質循環を数値的に表現して定量的に把握しようというのが今回紹介する生態系モデルである。
   食物連鎖における物質転送の概念の基本は食段階を表す生態系のピラミッドである(図1)。これは、光合成によって有機物生産を行う一次生産者(主に植物プランクトン)、それらを摂食する一次消費者(動物プランクトンや二枚貝などのろ過摂食者)、さらにそれらを捕食する高次消費者、が段階的に存在することを示すものである。これらが「食う-食われる」の関係を介して連鎖状につながっているので「食物連鎖」と言う。
   生態系モデルは現実の食物連鎖を忠実に表現するのが最良であるが、自然生態系に生息する生物の種数は数限りなく、それらの生態や生活史などが分かっていない現状では、すべてをモデルに導入することは不可能である。したがって、先の生態系のピラミッドにおける食段階ごとに、動物プランクトンを1つのまとまりにといった具合に、1つずつにまとめて導入するというのが、これまでのやり方の主流であった。
   自然再生推進法(2003)の成立もあって、最近では各所で自然環境再生事業が盛んである。「アサリが採れる干潟を作りたい」となると、そのキーとなる種がモデルのアウトプットとなるので、上記のような食段階を1つにまとめるようなモデルでは意味をなさない。このように、キーとなる種の個体群動態を表現できるモデルを
Individual-Based Model (IBM)と呼び、従来の生態系モデルにキーとなる種を導入するやり方が流行っている(図2)。
   ただ、実際の生態系の保全という観点では、一種のキーとなる生物が増えれば良いというものではないので、それらは「環境再生のシンボル」と考えるべきであろう。同様に、水質を良好に保つための指標としてCOD(化学的酸素要求量、Chemical Oxygen Demandの略)などが使われてきたが、生息生物との相互作用の結果が水質に反映するので、結局は生態系全体の保全を考えない限り、水質のみを良好に保つことはできない。生態系モデルを環境影響評価に用いる最大の利点は、系内で起こっている物質の流れや生物個体群の時間変化が「動的」なものであることが理解できる点である。モニタリングは物質の濃度など現存量の実測値を得ることによって現状を把握するという目的において重要であるが、現存量をいくら綿密に測定しても物質の流れは分からない。このようなことから、今後とも生態系モデルは環境保全や環境修復・再生の評価手法としてますます重用されることは明らかである。
山本 民次(広島大学大学院生物圏科学研究科)




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